斗鬼正一講義シラバス 2009年

文化人類学I

副題
 "楽"問(ガクモン)に入門して、大学生活得しよう
授業の内容
 フィールドワークの達人が、ニュージーランドや熱帯ジャングルのヤップ島に住み込み、生活を共にする「世界うるるん滞在」体験や、香港、東京、大阪、京都などの街を探検する「アド街ック」体験を通して、私たちが生きる社会や人間という不思議な存在の理解をめざす文化人類学を紹介する。
 民族が違えば生活も、価値観も、色の見え方、音の聞こえ方さえも異なる。「世界は広い」を実感し、自分達だけの小さな常識を脱し、地球的視野で考えられる「やわらかあたま」で、激動の時代を乗り切る「生きる力」を手にしよう。
 日本各地、世界をまたにかけ、ディズニーランドやコンビニ、携帯さえも学問してしまう文化人類学で「楽しくなければ学問じゃない」を実感しよう。
スケジュール
第1章 文化人類学は何の役に立つ?
1.文化人類学って何? 「ディズニーランドやコンビニや携帯も学問してしまう、おもしろ学問」
2.目からウロコが落ちる知的体験を楽しむ 「石頭からやわらかあたまへ」
第2章 文化とは何か−ものの見え方も、音の聞こえ方も文化次第 
1.文化のしくみ 
 文化の統合原理 「なぜ日本でディズニーランドが大成功したのか?」
 カテゴリーとプラン 「なぜ地面に座る若者=ジベタリアンは嫌われたのか?」
 「なぜプールサイドにスーツ姿の人がいると変なのか?
 「なぜ正月はめでたくて、餅を食べるのか?」
2.環境と文化 「もしキリストが日本に生まれていたら、キリスト教は?」
3.知覚、生理と文化 
 食と文化 「なぜゲテモノは気味が悪いのか?」
 色彩認識と文化 「なぜニュージーランド人は虹が5色に見えるのか?」
 音声認識と文化 「象の声はどう聞こえるのか?」
4.国民性、地域性と文化 
 「なぜ大阪の看板はド派手なのか?」
 「なぜ名古屋人はエスカレータの左に立つのか?」
5.文化の学習
 「タヌキや蛇が御馳走の香港人が、なぜ刺身を食べられないのか?」
6.動物と文化
 ペットと文化 「なぜニュージーランドのペット霊園は人の墓と同じなのか?」
第3章 男と女の文化人類学
1.性別と文化 「なぜ男らしい体、女らしい体にも流行があるのか?」
2.性差と文化 「男の子は本当にお人形遊びが嫌いか?」「なぜ男が女言葉を使うと気持ち悪いのか?」
総括・評価
成績評価方法
出席点30%、試験70%
テキスト
『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』 斗鬼正一 ミネルヴァ書房 2003
参考書
『こっそり教える「世界の非常識」184』 斗鬼正一 講談社 2007
その他
『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』・・・文化人類学I、II、専門ゼミ共通教科書、フィールドワーク論、異文化コミュニケーション共通参考書

文化人類学II

副題
 日常生活、身の回りの、不思議、当たり前を文化人類学して、自分探検、人間探検、世の中探検を楽しもう
授業の内容
 文化人類学の理論を武器に、みんなの「当たり前」に挑戦し、あっと驚く文化人類学の世界を体験してもらいます。
 なぜゴミやフケ、ウンチは汚いのか、なぜ美人はきれいなのか、なぜ朝食にすき焼き、夕食にトーストを食べると変なのか、なぜ品川ナンバーがおしゃれなのか、なぜディズニーランドでは落ち葉も枯れ木も存在を許されないのか、などと考えたことがありますか?当たり前過ぎて誰も気付きもしない疑問に、思いもよらぬ角度から光を当て、自分って、人間って、世の中ってこういう仕掛けで動いているのだ!と目からウロコの大発見を楽しんでほしいのです。
 いつも心に「?」を持って、知的発見の感動を経験し、日常生活を楽しみ、大学生としての知的成長をめざすきっかけにしてほしいと思います。
スケジュール
第1章 美人の文化人類学
1.美人はなぜ美人なのか?
 「なぜ昭和の大女優は今見ると美人じゃないのか?」
 「なぜ平安美人はオカメなのか?」
 「なぜ太っているほど美人、首が長いほど美人、下唇に入れた皿が大きいほど美人という民族がいるのか?」
2.イケメンはなぜイケメンなのか? 
 「なぜ化粧が濃いほどイケメン、という民族がいるのか?」
 「なぜ腹が出ているほどイケメンだったのか?」
3.ミスコンはなぜケシカランのか?
 「なぜ東大生がミス日本になると事件だったのか?」
 「なぜミスワールドコンテスト反対暴動が起きるのか?」
4.顔と文化
 「なぜ免許証の写真は笑っていると変なのか?」
 「なぜ福沢諭吉はああいう顔なのか?」
第2章 美景の文化人類学
1. 美しい風景はなぜ美しいのか
 「なぜガッカリ名所は名所なのか?」
2. 風景の味わい方
 「なぜ(名物にうまいものなし)なのか?」
3. 自然のままの風景は本当に美しいのか?
 「なぜ東京には人工富士山が64もあるのか?」
第3章 汚い、不潔の文化人類学
1. 汚いとは何か?
 「なぜウンチ、オシッコ、フケ、鼻くそは汚いのか?」
 「なぜゴミは汚いのか?」
2.なぜ人は自然を汚いと感じるのか?
 「なぜ落ち葉は汚いのか?」
 「なぜゴキブリはキモチワルイのか?」
 「なぜカラスは不気味なのか?」
3. なぜ人は人を汚いと感じるのか?
 「なぜ他人と触れるとキモチワルイのか?」
 「なぜワイセツはワイセツなのか?」
4.なぜ近親相姦はイケナイのか?
 「なぜ韓国人は合コンで名前を真っ先に聞くのか?」
第4章 東京の文化人類学 
1.オシャレな街、ダサい街の都市人類学
 「なぜカッコイイのは品川・横浜・湘南ナンバーなのか?」
2.ホームレスの都市人類学
 「なぜホームレスは段ボールハウスを川岸に作るのか?」
第5章 斗"鬼"の目で異界と祟りを文化人類学
1. 鬼と上野と常磐線 「なぜ常磐沿線はオシャレじゃないのか?」
2. 怨霊の棲む都 「なぜ陰陽師安倍晴明はキツネの子なのか?」「なぜ平将門の首塚が祟るのか?」「なぜ鎌倉は怪談トンネルだらけなのか?」
3. 銭湯という迷宮
 「なぜ千尋は橋の上でお化けと出会うのか?」
成績評価方法
出席点30%、試験70%
テキスト
『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』 斗鬼正一 ミネルヴァ書房 2003
参考書
『こっそり教える「世界の非常識」184』 斗鬼正一 講談社 2007
その他
『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』・・・文化人類学I、II、専門ゼミ、フィールドワーク論、異文化コミュニケーション共通の教科書、参考書

フィールドワーク論

副題
 「うるるん」「アド街」型質的調査で、身の回りを、街を、人間を楽問するワザを学ぼう 
授業の内容
 人類最大の謎は人間だ。ところがそれは統計や数字では理解しがたい不思議な存在だ。
 そんな人間・世の中という謎を、街を歩き、出会い、語り、楽しみ、生活することによって理解しようとするのが文化人類学的フィールドワーク。 
 調査といえば統計、数字オンリーだった企業、社会の関心も高まる「うるるん」「アド街」「田舎に泊まろう」型「行動する学問」の考え方とワザを学び、「見る目」を持った、日常生活や人間を楽しめる人になろう。 
スケジュール
第1話 人間という不思議な動物を読む…なぜフィールドワークなのか?
1.なぜ文化人類学者は現地食なのか?
 2.なぜ生活を共にする参与観察調査なのか?
 3.フィールドワークによる質的調査と統計数字による量的調査
 4.真実を読み取るとは何か?
第2話 フィールドワークの達人に学び、「見る目」を持った人になる
 1.元祖フィールドワークの達人・マリノフスキーに学ぶ
 2.買い物客を尾行調査した考現学者・今和次郎
 3.街の変な看板を探す「路上観察学」という奇妙な学問
 4.社会学者のフィールドワーク
第3話 フィールドワークと文化圏
 1.文化圏と調査地…茨城県七会村という不思議な村との出会い
 2.文化圏と境界…なぜ埼玉県の中に東京があるのか?(第3回)
 3.文化圏と地名…なぜサザンの茅ヶ崎も箱根の山中も同じ湘南ナンバーなのか?
第4話 フィールドワークのコツを学ぶ
 1.地図を読んでみる…東京・大阪地下鉄路線図の謎
 2.道案内をフィールドワークしてみる…京都人の道案内の謎
 3.メンタルマップを描いてみる…頭の中にある地図の謎
 4.調査地に入れてもらう…誰でも歓迎のイヌイットの村・よそ者お断りの雪国の村
 5.折込チラシ、看板から文化を読んでみる…好奇心と情報集めのテクニック
 6.話させ上手・聞き上手になる…インタビューのテクニック(第6回)
 7.記録魔になる…記録のテクニック
 8.街、文化、人間を読むという技術…情報分析のテクニック
 9.ライフヒストリーの聞き取りと分析、会話分析、ドキュメント分析
第5話 旅をフィールドワークする
 1.地名の怪…変な地名は何を語るのか?
 2.新幹線沿線「727化粧品」看板の怪−車窓から文化を読む
 3.「世界ウルルン滞在記」を分析する(第10回)
 4.安く、楽しく、有意義に−旅の達人をめざす
第6話 街をフィールドワークする
 1.「ぴあ」「TOKYO WALKER」という大発明
 2.「出没アド街ック天国」を分析する…都市を読むとは何か?
 3.「散歩の達人」から学ぶもの−タウンウオーキングという都市探検
 4.駅から街を読む
 5.路上の変なもの「トマソン」から都市を読む
 6.街の「変な人」から学ぶ
第7話 身の回りをフィールドワークする 
 1.自分の部屋を探検してみる
 2.鞄の中、部屋にある物に注目してみる
 3.写真を読んでみる
第8話 フィールドワークを体験する
 「あなたの街の宣伝本部長」になってみる
成績評価方法
 出席とレポート
テキスト
参考書
『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』 斗鬼正一 ミネルヴァ書房 2003
『こっそり教える「世界の非常識」184』 斗鬼正一 講談社 2007
その他
 『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』は、文化人類学I、文化人類学II、フィールドワーク論、異文化コミュニケーション、専門ゼミで共通使用可


異文化コミュニケーション

副題
 マクドナルド・ハンバーガー、洋食、ラーメン、横浜中華街といった身近な異文化との出会いから、世界と日本人を考える
授業の内容
 民族紛争が頻発し、日本も国際化に揺れる。しかし他方で「お箸の国」のはずの日本に、マクドナルド・ハンバーガーの上陸は大成功。ディズニーランドや横浜中華街は若者に大人気だし、今や国民食の天ぷら、ラーメン、カレーだって元々異文化だ。中国人と日本人は同じ顔で、筆談できるし、韓国語は日本語そっくり。それどころか長崎県からは韓国が見え、泳いでも行ける。鎖国日本、島国日本というけれど、江戸の町には外国人旅館さえあったのだ。
 すさまじい勢いでグローバル化が進む世界で生きていかなければならない私たちにとって、異文化コミュニケーションとは何か、なぜ重要、重大なことなのか、どうすればうまく行くのかを知ることは不可欠だ。ところが私たちは、異文化とどんな風に出会ってきたのか、それが自分や民族のアイデンティティとどうかかわっているのか、などということを考えてみることもない。
 そこで、マクドナルド、カレー、ラーメンといった食文化など、身近な異文化を材料に、異文化とどう出会い、かかわってきたのかを考える。さらにニューヨーク、ロンドン、ニュージーランド、横浜中華街、新大久保、大阪コリアンタウンといった異文化が出会う最前線を探る。それによって、世界と日本を理解し、しっかりとした自己認識を持った人、世界、日本を外から見られる、視野の広い「大物」になることを目指していく。
スケジュール
1.異文化コミュニケーションが作り出したマクドナルド・ハンバーガーという文化
 アメリカの食文化とハンバーガー
 なぜ世界博覧会がハンバーガーを生みだしたのか?
 ハンバーガー日本上陸大成功の裏に見えるもの−マック創業者藤田田という変な男を斬る
2.食とコミュニケーション
 共食とアイデンティティ・・・人はなぜ一緒に飲み、食べるのか?
 清潔と民族アイデンティティ・・・なぜ手食い、犬食いは汚いのか?
3.食と異文化コミュニケーション
 日本人と欧米の食文化・・・なぜ銀座木村屋がアンパンを発明したのか?
 欧米人と日本の食文化・・・なぜアメリカ人はカリフォルニア巻を発明したのか?
 日本人とアジアの食文化・・・なぜ焼肉店は蒲田、新小岩、フランス料理店は銀座に多いのか?
 日本人の異文化観・・・肉食禁止の江戸で、なぜ将軍徳川慶喜は豚肉を食っていたのか? 
 日本人の日本文化観・・・ベトナム人だって醤油、お箸の国の人なのだ
4.日本を外から眺めると
 江戸時代の日本にもイギリス人、アメリカ人が住んでいたというのは本当か?・・・「欧米系日本人」と単一民族神話
 新潟県は本当に裏日本か?・・・実は海は高速道路だった
 日本は本当に鎖国していたのか?・・・朝鮮通信使、琉球使節、黒船を迎えた江戸の人々
 日本は本当に島国か?・・・泳いで韓国に渡る
5.多民族共生時代を生きる人々
 都市計画から見た「人種のるつぼ」ニューヨーク、ロンドン
 欧米人の町のナショナル麻布スーパーマーケット
 横浜中華街に生きる中国人と日本人
 多民族混住の新宿大久保エスニックタウン
 国際化都市の大先輩大阪・鶴橋のコリアンタウン
6.ニュージーランドの国際理解教育
 イギリス人の作った多民族国家ニュージーランドの学校
7.異文化コミュニケーションを実験しよう
成績評価方法
 出席点40%、レポート(2回)60%
テキスト
参考書
『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』 斗鬼正一 ミネルヴァ書房 2003
『こっそり教える「世界の非常識」184』 斗鬼正一 講談社 2007
その他
 『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』・・・文化人類学I、II、フィールドワーク論、専門ゼミの共通参考書


専門ゼミ

副題
行動する学問=文化人類学の目で、街、世の中、生活を考える
授業の内容
 知的好奇心+行動力+人類学の目と方法論で、身の回りを見渡してみよう。ディズニーランド、コンビニ、ホームレスなど、日常の多様で身近なテーマが、人類学のユニークな理論、視点、方法論によって、目からうろこの落ちる知的発見、知的成長をもたらしてくれるだろう。
 文献研究も、人類学に加えて、民俗、風俗、異文化コミュニケーション、旅と観光、歴史など多様。さらに都市探検とフィールドワークも体験し、実践的に学ぶ。文献と現場の情報を材料に、人類学のユニークな視点で料理し、文化、都市、社会そして人間の理解をめざす。また知的成長に加え、フィールドワークでの様々な人々との出会いを通して、人間的成長も期待する。 
スケジュール
 3年次ではまず、文化、社会を理解する基礎理論や文化人類学的見る目を、『現代文化人類学入門』『路上観察学』などで学ぶ。
 ついで『東京の空間人類学』などを材料に、都市とそこに暮らす人々、生活を、人類学の目で見る見方、考え方、専門知識を学ぶ。
 他方で、文献に登場する街などを探検し、フィールドワークでナマの情報を探索する。 こうした経験を通して各人のテーマを追求し、卒論をめざす。
 これまでのフィールドワークは、日本海の離島隠岐の漁村、食い倒れの大阪、魔界都市京都、偉大なる田舎名古屋、手筒花火の新居町・舞阪町、川と海と金魚の町江戸川区、祭と観光の下町台東区など。
 卒論の例は、ディズニーランドの都市人類学的研究、浅草観光行動研究、地域イメージ・埼玉はなぜダサイのか、フリーマーケット・清潔感とゴミ問題、コンビニ・隠された文化の仕掛け、銀座、渋谷の看板からみた東京という都市、在日韓国人の食文化とアイデンティティなど。 
成績評価方法
平常点
テキスト
. 『 『東京の空間人類学』 陣内秀信 筑摩書房 1992
. 『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』 斗鬼正一 ミネルヴァ書房 2003
参考書
. 『こっそり教える「世界の非常識」184』 斗鬼正一 講談社 2007
その他
 『目からウロコの文化人類学入門−人間探検ガイドブック』は、文化人類学I、文化人類学II、フィールドワーク論、異文化コミュニケーションと共通使用可なテキスト