池田 圭佑
今年の夏は、私にとって生まれてから21年間の中で最も有意義な時間だったと思う。私は今まで夏休みを、遊びやバイト以外のことで過ごした事はあまりない。しかし今年の夏休みは、大学の「ゼミ」による「フィールドワーク」に参加することになった。
私が所属している「ゼミ」は「文化人類学」を研究しているゼミである、「文化人類学」とは、文化を通して人間を考える学問だ。私たちが普通に生活している中で、いつも何気なく見かけている物事があるが、興味がないと目には映らない。しかし、そういったいつも見かけている何の意味もなさそうなものに、実は文化的意味がある。例えば、「一日はいつから始まるのか?」など、当たり前のようだが答えることが出来ないことが、私たちの周りには多くある。そんな、少しでも変だな?不思議だな?と思ったことを調べてみると、実は私たちと深い関わりがあり、人間とは、私たちとはこういうものなのだ、ということが見えてくる。そんな研究が文化人類学なのだ。また「フィールドワーク」とは、知らない土地に行き、実際に現地の人々に話を聞いたり、自分の目で見て、人々の日常生活から、その土地の文化、そして人々を理解することを目的とする調査なのだ。
今回は東海道五十三次の「舞阪」に2泊3日でフィールドワークしに行くことになった。普通なら新幹線で行くのだが、なんと各駅停車で行くことになった。5時間は辛かったが、東京から出発して舞阪まで、外の風景で気づいた事をメモすることも大事な調査なのだ。 舞阪に着いて、フィールドワークをやりに行こうと思ったら、あいにくの台風直撃で悪天候になってしまったが、なんとかフィールドワークをやることができた。私のゼミの先生<斗鬼先生>は、さすが何回もフィールドワークを行っているだけあってパワフルだ。悪天候のため結局話を聞けたのは現地のおばさん1人だけだったのだが、とても興味深い話をいくつも聞けた。
2日目、3日目は台風晴れで天気も良かったため、絶好のフィールドワーク日和だった。舞阪の名所や資料館などを回り、最後に先生と別れ、自分たち自身で現地の人に話を聞くことになった、この現地の人に話を聞くという事が、このフィールドワークの中で一番辛かった、そして一番勉強になったことなのだ。
私は今までの人生の中で、他人の家に行き、全く知らない人に話を聞くことなどなかった。それが普通なのかもしれないが、はっきり言ってとても緊張していたし、あまりやりたくはなかった。やはり難しいのは話しかける時で、どう切り出していいのかわからず、最初はしどろもどろになりながらも何とか話を聞くことが出来た。それから回数を重ねるたびに、緊張も多少はするが少しづつ慣れ始め、質問もだいぶスムーズにすることができるようになった。
今回のフィールドワークは、知識が身についただけでなく、自身の成長にもつながったと思う。今までやったことがなかったことや知らなかった事を知ることによって、私自身の世界の視野が広がった。今まで暗くて見えなかった部分が明るくなって見えるようになった感じだ。他人とのコミュニケーション能力も学ぶことができ、就職にもとても役に立つ経験ができたと思う。確かに他人に話を聞いたり、知らない土地に行くのは大半の人はあまり気が進まないだろう、しかしそういった今までやったことのないことを行うことが、新たな発見や、自分自身の視野を広げるよい刺激になるのだ。私はこの夏のフィールドワークを経て、また一つ成長したのだと実感している。
大谷 哲也
今年の夏休みには、大学のゼミで行われたフィールドワークに参加した。今回は食文化とアイデンティティをテーマに、静岡の浜松に住んでいる人々の食文化についての調査だ。私たちは、東京駅から青春18切符を利用し、鈍行列車で片道約5時間かけ、静岡の弁天島駅まで行った。車内から見える風景からも学べることはたくさんある。今回利用した東海道線の車内から見える風景は、川を境にガラリと変化する。
駅に着いた私たちは、まず民宿に向かい荷物を降ろして、脇本陣に向かった。あいにくこの日は、台風が静岡に接近しており、天気は大荒れだった。雨の降りしきる中、街を歩いた。そして脇本陣で話を聞いたところで、また雨が一段と強くなってきたので、仕方なく旅館に引き返すことになった。その後ミーティングを行い、聞きたいことを質問事項としてまとめた。
次の日、私たちのもとを、リクルート社の取材でライターとカメラマンの方が訪れた。この日は、午前中は図書館や博物館などを訪れ、静岡の特産物やその地域の文化財などの歴史について調べ、午後は、その調べた資料をもとに、近くのスーパーで買い物にきた地元の人々にインタビューをした。最初は、なかなかきっかけがつかめず四苦八苦したが、いろいろな人にインタビューしているうちに慣れてきたおかげで、スムーズに会話がはずみ、さまざまなことを聞くことができた。その後は、民家にも行き、家にいた人にも話を聞いた。
最終日は2つのグループに別れ、それぞれインタビューを行い、最後は地元の人に聞いた水族館へ足を運んだ。
今回のフィールドワークを通して、私は実際に自分で歩いてする勉強方法を学んだ。また、インタビューにおいてコミュニケーション能力は、とても大切であると感じた。コミュニケーションが上手く取れないと自分の言いたいことが伝わらないからだ。これから、就職活動をしていく中で、コミュニケーション能力はとても重要視されるので、今回の経験を生かして日々精進していこうと思う。
落伏 由紀
*1日目。朝東京駅に集合、6時47分発の東海道本線に乗り、「各駅停車の旅」が始まる。普段は旅というと悠々と新幹線に乗って、ウトウトしていればあっという間に目的地に着いているという感じだが、各駅停車で行くと、普段どんなに自分達が楽をしているのかが良くわかる。こういう機会でもなければ、各駅停車の電車で静岡県まで行こうなんて思わないだろう。
東京駅を出発し、しばらくすると川を渡り神奈川県に入る。県境には大抵、川などがある。電車から見える景色も段々と変化してくる。途中の大磯駅は高級別荘地のため、看板が全くない。そして大磯を過ぎた辺りから畑が見え始める。全部で5回位乗り換えをすると、ようやく目的地の弁天島に着く。合わせて6時間は電車に乗っていただろう。この時点でだいぶ疲れてはいたが、新幹線に乗るのとはまた違った体験が出来て良かったという思いもあった。自分でも機会を作って各駅停車の旅も良いなと思った。
目的地に着くと、その日は台風が近づいていたため、凄い雨と風だった。傘も意味を成さない位凄かったが、民宿に荷物を置いて早速「舞阪宿脇本陣」に向かった。中に入ると外から見た感じよりも広かった。廊下の窓には初めて見るような仕掛けがあり、閉め方が変わっていた。その建物にはおばさんがいて、私たちしかお客さんがいなかったため、建物に関する説明も詳しくしてくれた。こちらが質問したことにも丁寧に答えてくれて、インタビューがとてもしやすかった。
宿に戻り、夜はミーティングをして今日インタビューした内容をみんなで話した。話し合ってみるとまだまだ聞けていないことがたくさん出てきた。人に話を聞くということはとても難しい。私は人と話すことが得意ではないので、緊張してしまって何も聞くことが出来なかった。明日はもう少し頑張ってみようと思った。
*2日目はリクルート社の取材の人たちが来た。自分達がホームページに載るなんて想像もつかない・・・。どんな風に撮影するかを話し合って2日目のフィールドワークが始まった。
まずは目的地の「舞阪町立図書館・郷土資料館」まで歩いた。行く途中にも神社の前で止まって撮影したり、ゴミ捨て場を見たり、色んなものに注意しながら歩いた。着くと各自で資料館を見て回ったり、図書館で舞阪や弁天島のことを調べたりした。私も「混ぜのり」について調べ物をした。様々な本が置かれており、楽しみながら読むことが出来た。現地の図書館に行くのはその土地のことを知るためには大事なことだなと思った。
図書館を出た後はお昼を食べ、午後からいよいよ突撃のインタビューが始まった。最初は知らない人に話を聞くということに慣れるためにスーパーの前で二組に分かれて話を聞いた。始めてみると、インタビューしながらメモを取るという作業が思っていたよりも難しいことがわかった。書きながら話を広げて次の質問をするという作業は一人では到底出来ないことだと学んだ。みんなでインタビューに対しての反省点を話し合った後、家に向かうことになった。
最初は外にいる人に話しを聞いた。洗濯物を取り込みながらもこちらの質問に答えてくれた。初めは緊張するが一度声を掛けてしまえば後はすんなり話すことが出来た。それでみんなの緊張が解けたのか、知らない人に声を掛けることが初めよりも楽になった。ピンポンを押して出てきてもらうよりも、外で作業している人に声を掛けるほうが、話をしてくれる人も警戒心を持たずに話してくれるような気がした。最後に話を聞いたおじさんは私たちの質問に笑顔で答えてくれて、こちらも気持ち良くインタビューすることが出来た。
*フィールドワーク合宿を終えて、様々なことを学んだ合宿だったなと思った。初めての各駅停車での旅や、リクルート社の取材、知らない人へのインタビューなど色々なことを体験することが出来、行って良かったなと心から思った。
実際に現地に行って自分の目で見たり、話を聞いたりすることによって、ただ話だけを聞くよりも興味も湧くし、楽しんで学ぶことが出来る。
現地の人へのインタビューもやる前は緊張したし、「無視されたらどうしよう」などと色々悩んで不安だったが、始めてしまえば私たちが質問したことよりも更に詳しく深く話してくれる人が多くて、とても気持ち良く進めることが出来た。質問に関しては、もっとうまく話を持っていく、笑顔を忘れないで話す、挨拶はきちんと丁寧にするなど、反省点は出したらキリがない位あるが、初めてにしては自分では満足のいく結果になった。人と話すことの重要さや、話し方などを学べて、実り多いものにすることが出来た。この経験をぜひ就職活動にもつなげていきたいと思っている。