「ブスかわいい」として秋田犬の「わさお」が話題を呼んだが、「ブスかわ」な女性も人気を集めているらしい。ネット上の百科事典「ウィキペディア」には「ブスかわいい」についての項目も出現。器量を揶揄(やゆ)した表現かと思いきや、若者の間ではほめ言葉として使われることが多く、男性からの支持も高いという。“ブスかわ女子”は今、なぜもてるのだろうか―。
■ブスは愛嬌
略
■新しい美の基準
略■「ブスかわ」は既存の文化への挑戦
では、言葉の広がりとともに、「ブスかわ女子」の一大ブームが到来するのだろうか。
「こういう言葉は既存の価値観を打ち壊そうとして生まれる。もてはやされて一般化すると、逆に廃れていってしまうんですよ」
文化人類学を研究している江戸川大学社会学部の斗鬼(とき)正一教授は、多くのメディアに取り上げられることなどで、逆に「ブスかわいい」という表現自体が消えていくと指摘する。
斗鬼教授は「美人の定義は時代や民族などによって違う。そして、その多くが権力を持つ大人の男性によって操られてきた。その考えを押しつけられてきた若者たちが、既存の物差しに挑戦しようと、こういう言葉を作り出すんです」とし、「ブスかわいい」は若い女性たちによって作られたと推測。
顔の作りや体形など、「美人」や「かわいい」などの定義を強く押しつけられてきた若い女性たちが、価値観を打ち破るために生み出したと考えられるという。
では、なぜもてるのかというと、「若い男性たちも一緒です。『ブスかわいい』女性を評価することで、これまでの大人の概念を逸脱しようとしているのではないでしょうか」。
「ブスかわいい」はいずれ終焉(しゅうえん)を迎えるのかもしれない。しかし、前向きに挑戦する女の子たちは、さらに新しい“美”の基準を作り出していくのだろう。