人呼んで「江戸川ウオーク2000」と発します

                                    斗鬼正一-

新入生はつらいよ

200052()、新入生の全員参加で「江戸川ウオーク2000」を開催。教員、新入生相互の親睦と、歩くこと自体を目的とする歩け歩け大会で、命名のヒントは、江戸時代に熟年パワーで日本の海岸線を蹄破、優れた地図を作りあげた伊能忠敬の足跡をたどる記念行事「伊能ウオーク」である。

コースはキャンパスから江戸川岸辺を南下して、葛飾・柴又の寅さん記念館への遊歩道。江戸川学園は生まれも育ちも江戸川・小岩。末っ子の江戸川大学が、ルーツを訪ねて歩けや江戸川22キロ、新たな旅に出ようというわけである。

旅の人、今日はどこへ行くのかね?

江戸川大学の社会学は現場と実践重視の社会学。環境問題を考え、生きた人間の姿を探求し、起業家やマスコミ界をめざす学生も多い。演習、実習に力を入れ、ゼミによるフィールドワークも盛んだ。これは、人間の作りだした社会に関する諸事象の考察には、何よりも現場で見ること、体験することが不可欠だからだ。

このような“現場の学問”のコツは、旅と同じ好奇心と行動力。名も知らぬ小さな駅でも、ちょっと周りを歩いてみよう。もう一本路地に人ってみよう。そして、おいちゃん、おばちゃんに声をかけてみよう。そこから思わぬ出会いと発見が広がるだろう。まさに寅さんのトランク一つ、身軽旅だ。

こうした好奇心溢れる行動力を可能にするのが歩く力。素晴らしい生の情報も、やめておこうと思ったとたん、一生出会わない。だから歩く。歩くことこそ、江戸川大学社会学の原点なのである。

チャラチャラ流れる御茶ノ水、粋な姐ちゃん・・・

コース選定で決定的だったのは、実はトイレ。当初、計画の出発点は三郷の河川敷、終着点は江戸川学園の発祥の地を訪ねるという理念から、当然江戸川女子中・高校。どちらも数百人の集合に問題ない広さで、駅に近く交通も便利……の筈だった。ところが三郷では、下見に出かけた実施委員自身が、トイレ探しに河川敷を右往左往。コース途中は公衆トイレが点在し、大人数でも滞留さえしなければ大丈夫。しかし出発点は新人生全員の大集合である。考えてみれば、終着点は女子校で、男子トイレが不足気味。実施委員自身が人道上の大問題を身をもって実感してしまったから、本学キャンパス出発、寅さん記念館終着へと即座に変更。おかげで狭い道、広い交差点通過のコースとなり、大勢の誘導員を動員する羽目に陥ったのであった。生理的現象の前に、理念も吹き飛ぶ。まさに「大したもんだよ蛙のションベン」、恨みのトイレである。

テキヤ殺すにゃ刃物は要らぬ、雨の3日も降りゃあいい

当日、最大の心配は無論、雨。せっかくの準備も無駄になり、決行しても河川敷で降られたら目も当てられない。おまけに自主下見のT先生から、風が強いと地図も吹き飛び、目も開けていられない、なぜ川沿いのコースなど選んだのだ、と恨み節を聞かされて、前夜はテルテル坊主に祈るのみである。

ご厄介かけがちなる若造でございます

落ちこぼれ収容のマイクロバスから医薬品、チェックポイント押印のスタンプまで、用意万端整えた。それでもやってみなければわからぬ初開催。運んだはずの弁当が、運んでなくて、届いていない。結局、事務局職員の弁当がない、という大失態。こればかりは平身低頭。食べ物の恨みは恐いものである。

驚き、桃の木、山椒の木、ブリキにタヌキに蓄音機

オジさん達の目算は、どうせ軟弱現代っ子、みんな途中で音を上げて、たどりつくのは12割、というもの。ところが基礎ゼミごとに語り合い、励ましあってゴールをめざし、完歩率は驚きの91%に達した。

頑張った、まだ頑張る気力はある、でももう歩けない。「奮闘努力の甲斐もなく」無念の途中棄権組の多くは、足が痛くて、マメが潰れて、と泣く泣くリタイアした人たちだった。現代青年も立派なものである。

いつかお前が喜ぶような、偉い兄貴になりたくて

終着点の寅さん記念館では、完歩者が河原で健闘をたたえあい、達成感を味わう。ならばせっかくの柴又帝釈天、今度は草団子をふるまおう。江戸川大学伝統の行事めざして、多様なアイディアを期待。「以後見苦しき面体お見知りおかれまして」、新世紀も歩けや江戸川21

車寅次郎拝

(『駒木キャンパス』第10号、20013月)

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