関西テレビ     
 S-Concept 第2回
 「カラダのだから」
に出演
 2008年1月20日日曜日16時−17時25分

テーマ
 なぜウンコは臭いの?
 なぜ泣くと涙が出るの?
 なぜ人は寝るの?
 なぜ人はキスをするの?


 
そういえばなぜだろう?・・・・・
 子どもに聞かれて困った身近な不思議に、医学、動物学、スポーツ学、心理学、文化人類学の専門家が、それぞれの立場から答えます。


出演
*ブレインジャー
 有田秀穂(東邦大学教授・医学)、実吉達郎(動物学)、松田恵示(東京学芸大学准教授、スポーツ学)、重野純(青山学院大学教授・心理学)、
斗鬼正一(江戸川大学教授・文化人類学)
*ゲスト
 田中直樹(ココリコ)、松居直美、大鶴義丹、石黒彩、次長課長、品川庄司
*司会
 遠藤章造(ココリコ)、山本悠美子(関西テレビアナウンサー)


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河本準一が困った疑問
「人は悲しいとなぜ涙が出るの?」                                   
 

*文化人類学・斗鬼正一の答え 「社会のルール」

社会が泣くべき場合と決めていると涙が出てきて泣くのです。

例えばお葬式では、あまり悲しくない時でもつい涙が出てしまうのは、「お葬式は悲しい儀式で泣く方がいい」と社会で決めているからです。

 鹿児島県中甑島では、葬列で死者にもっとも深い血縁の女性、たとえば母ならその娘が、大声で泣かなければいけないことになっており、そうでないと、笑いものになったといいます。誰が泣くべきかが決められていたのです。

台湾や日本には泣き女がいました。泣き女は涙の量の調整もでき、報酬の米の量により一升泣き・二升泣きなどと泣き分けたのです。どのくらい泣くか決められていたのです。

韓国では「卒哭祭」までが喪主が泣くべき時で、それ以降は朝と晩に食膳を差し上げるときにだけ哭をします。いつまで泣くかが決められているのです。

また、泣き方のメロディーが決められている例もあります。

              

*心理学・重野純の答え 「悲しさを伝える道具」
 人は他人とのコミュニケーションがないと生きていけない動物でその為には、お互いが今どんな気持ちでいるのか感情を理解しあうことが大切。
 「涙」は自分の気持ちを相手により強く伝えるための道具。
 心理学では「悲しいときの涙」は、その悲しい気持ちを相手に知ってもらうために出ているのです。

*動物学・實吉達郎の答え 「ヒトは安全だから」
 動物には悲しいという情動はないようです。動物の涙は目が乾かないようにするためにしか出ません。
 いつ他の動物に襲われるかわからない危険と隣り合わせで暮らす野性の動物たちは悲しいから泣く、という余裕はありません。
 人が悲しいときに泣けるのは、それだけ身の回りが安全であるからなのです。

 医学・有田秀穂の答え 「大脳の指令」
 私たちが普段流す涙は3種類あります。
 まばたきをした時に出て、眼球を細菌や乾燥から守ってくれる涙(基礎分泌)。たまねぎを切ったときなど反射的に出る眼球を強い刺激から守る涙(反射性分泌)。悲しさなどの感情で出る涙(情動性分泌)。
 悲しいときに出る涙は大脳から指令が出るのです。
 人は脳の前頭前野で悲しいことを感じると、まずその信号を上唾液核に送ります。そして自分の意思とは無関係に働く自律神経を通って涙腺を刺激し涙を出しているのです。
 唯一、脳からの刺激で出るのが「情動性分泌」の涙なのです。
「情動性分泌」の涙はストレス緩和の効果もあるのです。


松居直美が困った疑問 「人はなぜ寝るの?」

*文化人類学・斗鬼正一の答え 「連帯感を増す」

人は「同じ釜の飯を食う」、「裸のつきあい」、「寝食を共にする」というように、睡眠をはじめ食事や排泄などの動物的なことを他の人と一緒にすると連帯感が強まります。

これを制度化したものが「寝宿」です。バヌアツなど各地にあり、現在でも三重県の答志島に残っています。漁など助け合いが不可欠なこの島では、男たちの連帯感を増すために、江戸時代から寝宿の習慣がありました。現在も10軒の「寝宿」が存在し、中学を卒業した男子が週に一度生活を共にしています。仲間が怪我をすれば駆けつけたり、冠婚葬祭では必ず協力するなど、寝宿で生活を共にした寝屋子仲間は一生涯協力しあって生きていくのです。

             

*動物学・實吉達郎の答え
 「ヒトは安全だから」

 野生の動物はいつ他の動物に襲われるかもしれないので一般的に熟睡することはないと言われています。
 例えば2頭のシマウマは片方が寝ていれば、もう片方は周りを見張ります。
 アザラシはごく短時間で寝たり起きたりを繰り返していて最大で1分半程度しか寝ません。 一日に20時間も眠るというナマケモノは寝ている間に襲われない様に木のフリをして体を隠す「擬態」をしています。
 人が熟睡できるのは寝ている間に襲われる心配がない安全な場所に暮らしているからなのです。

*スポーツ学・松田恵示の答え 「筋肉を動かす」
 一日の疲れを取るためには必ず寝ないといけないと思っていませんか?
 筋肉だけのことを考えると、ただ安静にしているだけでも回復するのです。
 人が体を動かす時、手や足の筋肉はそれぞれが勝手に動いているのではなく、全て脳の指令で動いているのです。
 筋肉を動かす脳を休ませるために睡眠が必要だといえるのです。
 また、運動をして寝ると成長ホルモンの分泌が促され筋肉が強く大きくなります。
 つまりスポーツ学では人が寝ることは脳を休めるのはもちろん、体を作るためにも必要なものなのです。

*医学・有田秀穂の答え 「休息とそうじ」
 医学的に寝る理由は二つ。
 たくさん働く脳を休ませるための「脳の休息」ともう一つは「活性酸素の掃除」。
 活性酸素とは、人が体を動かすためのエネルギーとして酸素を燃やした時に出るススのようなものです。この活性酸素が体の中に溜まるとガンや生活習慣病を引き起こすとも言われています。
 夜寝ているときにメラトニンという物質が活性酸素の掃除をしてくれます。メラトニンは太陽が沈んでから多く出はじめ、太陽が出るとメラトニンの分泌はなくなるのです。したがって不規則な生活で夜遅くまで起きているヒトはメラトニンの分泌量が減り、掃除しきれなかった活性酸素がどんどん溜まっていってしまうのです。

*心理学・重野純の答え 「シャットアウト」
 人は嫌なことがあると、その情報をシャットアウトするために寝てしまうことがあります。 一見ダメな行為のように見えますが「寝て情報をシャットアウト」した方が記憶が残るというメリットもあるのです。
 何かを覚えた後に新たなことを覚えると「干渉」といって記憶が不確かになったり忘れたりするのです。 

石黒彩が困った疑問 「どうしてうんこは臭いの?」

*文化人類学・斗鬼正一の答え 「現代だから」

昔の日本人はうんこを臭いなんて思っていませんでした。

 大正時代の初めくらいまでうんこは貴重な肥料だったのです。江戸の街には農民たちが桶を担いで、うんこを買いに来ていました。大名屋敷のが一番品質が良く、牢屋の囚人のが最下等でした。水で薄めて偽装したりされたので、農民やうんこの問屋は、嘗めて品質をチェックしたほど。貴重な肥料であるうんこは臭いなんて思わなかったのです。

 しかし、化学肥料が登場してうんこが必要でなくなると、とたんに臭いと感じるようになったのです。

 もしもうんこからバイオ燃料が作れる、なんてことになったら、臭いどころではなくなるかもしれませんよ。


         

*心理学・重野純の答え 「期待していないから」
 いい匂いがするとは思っていないから、いい匂いがすると期待していないから。
 こうだと思って匂いを嗅いでしまい、こうだと思ってそのように見てしまう、過去の経験から脳で匂いなどの種類を決めてしまうことを「トップダウン処理」といいます。
 強烈な匂いがあるくさやや納豆が臭いと感じないのは、それが食べ物だと知っているからだと言われています。お腹いっぱいになって残飯としてみると急に臭く思えるのがその証拠です。

*医学・有田秀穂の答え 「体の中で腐る」
 口から入った食べ物は体の中で食道、胃と進みながら消化酵素によって栄養が吸収されていきます。そして小腸、大腸と進み肛門からうんことして排泄されます。
 私たちの腸にいる細菌はおよそ千種類。この細菌が食べ物を腐らせて、あの匂いを生んでいるのです。

*動物学・實吉達郎の答え 「情報収集」
 嗅覚の鋭い動物はうんこから1.年齢・性別・大きさ、2.敵の数、3.仲間の位置まで分かってしまうのです。
 人間も戦国時代は敵軍のうんこから敵が近くにいるか遠くにいるかなどの情報を収集していたのです。

スポーツ学・松田恵示の答え 「スポーツの敵」
 臭いうんこはまさにスポーツの敵なのです。
 アスリートは試合のために食べ物・睡眠などの厳しい体調管理を行います。その中でうんこの匂いが普段と違うということは普段と体調が違う証拠といえるのです。

大鶴義丹が困った疑問 「なぜ人はキスをするの?」

文化人類学・斗鬼正一の答え 「挨拶」

キスは民族によって愛情表現の場合、あいさつの場合、愛情表現・あいさつ両方の場合があり、それぞれ意味づけが違っているのです。

 ヨーロッパの場合は、昔から愛情表現だけでなくあいさつとしてのキスの習慣がありました。だから男性同士が抱き合ってキスをしているのもあいさつだから、恥ずかしいことではないのです。

 一方、日本では、昔からキスは性愛接吻だけで、あいさつという意味づけはなかったのです。「口吸い」などと呼ばれていたキスは、好きな相手と隠れてする秘め事でした。だから今でも恥ずかしい特別なものと思う気持ちが強いのです。

             
 日本の接吻映画第一号は、1946(昭和21)年523日公開の佐々木康監督「はたちの青春」。GHQの指示で、接吻シーンが入れられたが、幾野道子と大坂志郎は、実はガーゼを当てて接吻した。
 この日を記念して523日は『キスの日』とされた。


医学・有田秀穂の答え  「お互いを知る
 人はお互いを知るために感覚を使います。目が一番重要な感覚ですが、唇の皮膚感覚は体の中でもかなり敏感なのです。
 赤ちゃんが何でも口に入れて確認しようとするのも感覚が鋭い証拠なのです。
 また、脳の中には手や足などの領域がありますが、唇が占める割合は非常に広いのです。感覚の鋭い唇を合わせることはお互いを知る上で重要な役割を果たしているのではないかと思います。

*心理学・重野純の答え 「メッセージ」
 キスにはプラスの気持ちを伝えるメッセージの役割があります。また、人は愛情以外にも感謝や満足、敬意など様々な感情をキスで伝えています。
 言葉以外の方法で思いや感情を伝えることを「ノンバーバルコミュニケーション」と言います。例えば好きな人に対してただ言葉だけで伝えるよりも言い方や仕草をプラスすれば、より好きな気持ちが伝わります。キスもノンバーバルコミュニケーションの一つでプラスの気持ちを相手に伝えるのに有効なものなのです。