海外研修で恥をかかない法、損をしない法

斗鬼正一

1.とにかく健康

出発前の体調調整、逆転する季節に合わせた衣服の準備は必須。ニュージーランド南島は真冬だ。着いてすぐに出せるように持っていこう。持病が心配な人は、常備薬を準備。医者に英語の診断書を書いてもらうと良い。

2.とにかく交通安全

日本と同じ左側通行で、交通標識もほとんど同じだが、信号が違う。歩行者用と車用は連動しておらず、歩行者用はボタンを押さないと青にならない。うっかり車用が青になったからと渡り始めると、車が突っ込んでくる。一般道でも郊外は制限速度100キロ、免許取得も簡単で、酒酔い運転にも寛大、おまけに強制保険はない。きわめて危険。高速道路は料金所がないから、気が付いたら高速道路を歩いていて、肝を冷やした江戸大生もいる。

3.盗難、落とし物注意

世界中で日本ほど治安が良い国はそう多くはない。ところで成田空港は日本とは言ってもなかば外国だ。友達が見ていてくれるだろうなどと、荷物を置いたまま、空港内をはしゃぎ回っていたりすると、荷物は消えてなくなるかもしれない。場慣れした人は、荷物を放さない。

パスボートをなくしたら、再発行まで日本に帰れない。飛行機は自己負担だから大損。「命の次に大事なパスポート」は、往復は肌身離さず、現地ではスーツケースに入れて鍵をかけておくこと。ボケットに入れて持ち歩いたり、ましてメモ帳代わりになど決してしないこと。あてがわれた部屋の中でも、現金、貴重品など置いておかない。子供に出来心を起こさせてしまったら、置いた人も悪い。

4.セクハラ注意

一般的注意は日本と同じだが、男子学生が小学生の男の子にプロレスごっこをせがまれて遊んでいるうちに、うっかり微妙な所に触れてしまい、大騒ぎになったことがある。癖でいつもズボンのボケットに手を入れていて、思わぬ誤解を招いた例もある。何がセクハラか、日本と多少異なる。相手が同性、子供でも要注意、立派な刑事事件になる。

5.非行に注意

ビリヤード場で夜遊びしていて、警察沙汰寸前になった江戸大生がいる。どこにも悪者、不良はいる。ただし困るのは、どの程度で非行なのかが日本と同じとは限らないこと。クライストチャーチの場合では、普通の若者は、夜の町のゲーセン、ビリヤード場、居酒屋でたむろするなどということはしない。夜の町を徘徊するのは、地元の不良グループと、東洋人なのだ。

6.場慣れしよう

場慣れしない人は、見るもの、聞くもの、皆珍しく、驚きや緊張のあまり、すっかり舞い上がってしまい、普段ならするはずのないような、とんでもない失敗をしたりする。おまけにそうした様子は、場慣れした人には、気の毒を通り越して、みっともないと見られてしまう。社会人になれば、国際的な仕事をこなさなければならないかもしれない。その時に舞い上がっていたのでは、それこそみっともないでは済まない。でもみんなはまだ大学生になったばかり。この研修を今のうちに場慣れしておく機会として利用すれば、これは得。しかしいくら大学生といっても、やはり恥をかきたくないし、損をしたくない。そのために必要なのが予備知識だ。

7.騒ぐな

空港、飛行機、ホテルで大勢の団体に囲まれてしまった一般客の気持ちを想像してほしい。それだけでも不愉快なのに、おまけに大騒ぎされたらどうだろう。大声で話し、大笑いする、飛行機が揺れるたびに騒ぐ、離着陸の時に拍手する、機内でストロボを使って写真を撮りあって騒ぐ、などというのは、緊張のあまりなのだろうが、みっともないし、一般客にとってはほとんど暴力と同じ。とにかく静かにしていれば、場慣れした人に見える。

8.喫煙は恥のもと

機内は当然全面禁煙。トイレに隠れて吸って火災警報が鳴り、機内放送されて恥をかいた江戸大生がいる。これは立派な犯罪だ。また列車、バスは勿論、空港、ホテル、レストラン、店などことごとく禁煙。吸えるのは吸い殻入れの置いてきたある喫煙所だけだ。ニュージーランドではそもそも煙草を吸う人は少数派。吸い殻投げ捨ては厳禁。クライストチャーチ教育大学キャンパスの場合、吸い殻入れが何ヶ所か置いてあるが、元々なかった。日本人があまりに煙草を吸い、吸い殻を放り投げるので、わざわざ設置したのだ。

9.酒は恥のもと

飛行機の中で酒を注文し、身分証明書提示を求められて恥をかいた江戸大生がいる。日本のように酒に寛容ではない。酒の販売、提供は厳しい免許制、レストランでも酒を出せないところは多いし、酒の自動販売機などというものは絶無。仕事帰りに居酒屋で一杯などという習慣はほとんどない。いつでもどこでも酒を飲み、多少のことは「酒の上の事」で済ます、などということはない。公衆の面前で酔っぱらって騒いだり、嘔吐したりするのは大変な恥。それどころか警察に通報されて大騒ぎになることもある。

10.ホテル、レストランで恥をかかない

部屋以外のところ、つまりホール、廊下、エレベーター、レストランなどで大声で話したり、笑ったりしないこと。パジャマ、浴衣、スリッパ、裸足で部屋を出ないこと。町中と同じなのだ。無論自分の部屋でも、隣に聞こえるような大騒ぎをしてはいけないし、ドアを開閉する音もうるさい。ホテルの部屋は、2人、3人のための部屋であり、大勢で集まるところではない。

11.金遣いに注意

地味で質素、堅実なニュージーランドで、日本の若者がショッピング、ブランド物漁りに熱中していたら、キウィ、ホストファミリーにどう思われるだろうか。日本とは、収入、物価水準も違うし、若者を(裸の)王様に祭り上げて、消費を煽る若者市場などというものはないのだ。

12.浮き上がらない

キウィはとても地味で質素。特に大学生は堅実。そんな人たちの中に、奇抜な髪型、服装の日本人が入ると、恐ろしく浮いて見える。目立つというのとは違う、単にみっともないのだ。

13.挨拶と気軽な会話

キウィは誰にでも気軽に挨拶する。バスに乗り降りする時、運転手と乗客が挨拶を交わすのは常識。後ろのドアから降りる乗客が、わざわざ運転手に挨拶して降りていくほどだ。店に入る時も店員の「いらっしゃいませ」に、客も答える。そればかりか知らない同士でも、バス停で偶然一緒になった人、散歩中にすれ違った人などが挨拶したり、会話を交わしたりする。恥ずかしい、面倒とためらっていたらチャンスが逃げていく。顔見知り、友達になれるかもしれないし、思わぬ親切を受けるかもしれない。そして何よりも、挨拶するすがすがしさを知ろう。

14.家族の一員になる

ホームスティは民宿ではない。日本人にはなかなか実感が湧かないが、キウィは、アカの他人、英語が通じない外国人でも、気軽に家族の一員として受け入れてくれる。だからこちらも家族の一員として振る舞わなければ失礼だし、せっかくのフィールドワークのチャンスだ。

まずは朝のシャワー。風呂に入る人はあまりいない。寒い冬も朝のシャワーだけ。おまけにお湯を大事にするから、5分間だけなどと時間制限のある家もある。

夕方は早い。5時ころまでに帰って6時頃には家族揃って夕食。お祈りで始まり、テレビを消して、という家もある。夜遊びして、いつまでも帰ってこない、各自がバラバラの時間に、好きなものを勝手に食べる、などということはないのだ。

食事の後は家族団欒。各自が部屋に閉じこもり、自分のテレビを見ている、などという事はない。自分の部屋にいるのは、寝る時、着替える時くらい。だから普通個室のドアは開けておくし、トイレも使用中以外は開けておく。

就寝も早く、10時にはたいていの人が寝ている。一人だけ遅くまで起きていると迷惑になることも多い。そんな生活時間だから、毎日帰宅時間を伝えておき、遅れそうになったら必ず電話をする。ホストファミリーは家族の帰宅を心配して待っているのだ。

土日は、家族揃って教会に行き、一週間分の買い物をし、それからガーデニングや日曜大工に精を出す、といった家が多い。自分は無宗教だなどと言わずに、教会にも連れていってもらおう。

共稼ぎが当たり前だし、日本のように、クリーニング店、コンビ二と、金を払って何でも簡単に済ませてしまう、ということをしないから、家族が協力して家事をするのは当然で、お父さんも、大学生、高校生の子供たちも、料理、皿洗い、洗濯、掃除、ガーデニングと何でもするのが当たり前。だから江戸大生も、是非家事を分担して、一緒に楽しんでほしい。

15.ニュージーランドの第二の家族を持つ

不安な気持ちはわかるが、せっかくニュージーランドに来ているのだ。これからいくらでもつき合える日本人同士はとりあえず置いて、キウィとの付き合いを最優先しよう。土日は勝手に友人を連れてきたり、友人と出歩いて、ホストファミリーと話さないで済まそうなどというのは損だし、失礼だ。

要するに家族の一員として生活してみよう。そうすれば、観光旅行や本ではわからない、キウィの姿が見えてくる。そしてニュージーランドに、すばらしい第二の家族ができる。

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