Dr. Kazuhiko Fukuda, Professor of Psychology at Edogawa University
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■ 金縛り体験は、その恐ろしい体験内容から、心霊現象とみなされることもありますが、科学的に説明のできる現象で、学術的には「睡眠麻痺 (sleep paralysis)」と呼ばれ、世界中で多くの人が体験しています。生理学的には、夢とよく似ている現象で、REM(レム)睡眠という睡眠の時におこります。金縛りの時に体が動かないのは、REM睡眠のひとつの機能として、脳から運動ニューロンへ抑制性の指令が送られるからです。幻覚が見えたり聞こえたりするのも、夢と同じメカニズムによって、脳が作り出した仮想現実に依っています。金縛りの時に寝室の様子が見えることがありますが、実際には本人は目を閉じていて、第三者からは眠っているようにしか見えません(実際、眠っています)。実は、鮮明に見える部屋の様子も含めて、すべて脳が作り上げた偽のイメージなのです。
■下の図は、金縛り体験を実験室で誘発して、その時の脳波を分析したものです。左は、通常の夢、右は金縛り体験時の状態です。通常の夢を見ているとき(左)にくらべて、金縛り状態(右)では、同じREM睡眠と言っても、脳の活動水準が異なり、金縛り体験時に、(特に中心部から後頭部で)脳活動が活発であることがわかります。このことは、金縛り時に体験する幻覚が現実と見紛うほど鮮明であることや、夢ではどんな奇妙なことが起きても受け入れてしまうのに、金縛り時には、この体験が尋常ではない状態であると認識できるということの生理学的な基礎となっていると考えられます。

Topographic images of alpha wave distributions during dreaming and sleep paralysis experiences
金縛りについて: About Kanashibari